前回更新からわずか(当社比)ですが、レビュー記事を続けます。珍しく欲が沸いているんですが、新規に取材に行く余裕が無かったので、過去のRAWデータから、構想のあったレンズを取り上げます。

AF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VRです。既に手放したレンズにつき、外観写真についてはご容赦願います。詳しい写真はメーカーページをご覧下さい。
D500で見ていきます。条件として自動ゆがみ補正とヴィネットコントロールはOFF、ピクチャーコントロールはスタンダード(SD)とし、色空間はsRGBです。基本的に5000Kに統一し、Adobe LightroomでRAW現像。

SD 5000K
まずは曇天、広角側の開放で。比較的周囲まで線を描いている印象があります。しかし若干の甘さを感じます。軸上収差もよく確認できます。中央右側の工事現場や、背景のビルに注目。

SD 5000K

SD 5000K
同じシチュエーションで中域から広角側へそのまま引いたシーン。ピントは動かしていません。露出は車内に寄せています。

SD 4200K +マゼンタ
標準域です。開放ぎみでまずまずの描写です。このあたりのラインをアベレージで出してくるのであれば遠征での起用も視野です。

SD 5000K
テレ側で前ぼけを作った場面です。f8でも周辺減光が見られます。また、左上のビルに注目です。水平を取ったのに歪みの影響で傾いているように見えますね。ピント面の原爆ドームはまずまずです。

SD 5000K
晴天下のテレ側です。鹿の毛並みを細部まで再現しています。このくらい絞ればひとまず実用の印象です。画面端に行くにつれて…という感想が少しわきます。

SD 4950K +マゼンタ
同じくテレ側で近寄ったものです。ピントは耳のあたりですが、良い線だと思います。

SD 3500K +マゼンタ
さて便利ズームなら登板数があるであろう屋内です。もちろんフラッシュなど使えない想定ですから、どれだけ露出を稼げるかになってきます。標準域で開放ですが、仏像の装飾など、細かい部分までよく描いています。ISO1600を遠慮なく乗せましたが、そこまで苦しんでいないと思います。

SD 4150K +マゼンタ
ひどい写真ですが、パッとRAWデータを流し見したところ、テレ側の開放がこのくらいしかありませんでしたので、本当に参考程度に載せておきます。ピント面は高倍率にしてはよく頑張っていると思います。しかしながら軸上収差がどうしても残ります。このあたりは編集ソフトが必須になりそうです。

SD 4150K +マゼンタ
近接の画面。ショーケース越しにプラレールを。このレンズの最短撮影距離はズーム全域で45㎝です。

SD 4100K +マゼンタ
f/11まで絞った画面。このあたりまで絞れば全体的に落ち着きます。軸上収差も少なく、最周辺まで使えます。

SD 3900K +マゼンタ
わずかに絞った広角側。ピントは改札機です。注目すべきは右下です。ハイライト部などの処理は言わずもがなですね。

SD 4150K +マゼンタ
便利ズームですから、あらゆる撮影シーンに対応するわけです。つまり人によってはISO三桁もざらに使用するかもしれません。このシーンを撮影して驚いたのは思ったよりもイケることです。APS-C機の高感度に付き合わせておいて、ある程度は写ることには脱帽です。この辺りは総括で詳しく語ろうと思います。

SD 4450K +マゼンタ
歪みを見るためだけのカットです。18‐200のときも同じようなカットをやりましたね。購入して初日の感想に食い込んでくるほどこのレンズは歪みます。自動ゆがみ補正は必須級です。

SD 4950K +マゼンタ
便利ズーム故に、つけっぱなしにしておくだけで撮影シーンは生まれます。そこが最大の魅力です。
総括しますよ。
Fマウントが終わろうとしている2024年10月現在、未だラインナップに残っているしぶといレンズです(言い方)。しかしながら発売から11年も経過しています。意外なロングセラーなんですね。筆者としては、運用することで得られるメリットよりも、手放して別のものを得ることのほうがメリットが大きいと感じ、1年前に手放しました。実状として、AF-S18-70が手元にいた上に、高倍率を欲する場面がなく、「いやだったら18-70で足りるし」か「広角1本で充分じゃ」となっていました。となればただの防湿庫の肥やしになるわけですから、早々に掃きました。
運用期間の感想を全部凝縮して要約すると、「便利だが140mmも必要か??」「日常使いならサードパーティ製の望遠レンズで十二分である」となりました。遠征や旅行では非常に良い仕事をしてくれます。現に去年5月の2度の遠征ではメインレンズとして据えていました。これにより拾えないシーンに泣くことはなかったのです。確かに便利であるとしかとメーカーの思いを受け取りました。さらに言えば投入のきっかけは一台完結できる運用を目指した遠征パーティの形成です。おかげさまで立ち回りを楽にし、痒いところに手が届く活躍をしてくれました。しかし昨年8月の回では、18-70を再びメインに据えることとし、当レンズは留守番でした。その際には撮影の依頼があり、パソコンも持っていけない状況で、あの画質では満足な撮影結果が得られないとの判断のもとでした。他の要因としては撮影対象がわかりきっていたこと、WEB掲載だけではなく、紙媒体での使用が想定されたことがありました。これを一つのきっかけに使用しなくなりました。
もう一つのきっかけとしてサブ機の投入がありました。6月よりフルサイズをサブとして運用開始したため、APS-C専用の当レンズは、遂に出番をなくしてしまう結果となりました。その影響で6月には出番が激減。8月の遠征や今年の遠征では、サブ機の影響で、拾うべきシーンを拾っていくのが精いっぱいだった一台運用のころとは打って変わり、D500に触らず、拾うべきシーンにレンズを付け替えて表現を広げるまでに至りました。7月以降は、AFやVRの故障を防止するためにたまにボディにつけて通電してやる程度となりました。
ここまで既に長ったらしいですが、要するに日常使いには有り余るという事です。大は小を兼ねるといいますが何でもかんでもデカけりゃいいってもんでもありません。画質、焦点距離、コスト、VRの有無、運用方法や環境など、様々な面を踏まえたとき、果たして当レンズが一番良いのかは要検討となります。様々なボディのキットレンズとして長らく発売されていることと、どんな撮影シーンにも対応するかどうかということはイコールではありません。
お勧めしたいユーザとしては、鉄道を撮りながら旅行や遠征をメインにしている方が筆頭でしょうか。望遠を必要とする鉄道撮影ならば、70mmや105mmでは足りないシーンが必ず出てくるはずです。しかし18-200mmではまた前玉の大きさが変わってきます。サイズ感と焦点距離をトレードオフするのであればバランスはよいと思います。それから18-135mmにはVRが付いていません。
ほかのユーザを思い浮かべれば、子供の撮影をするような保護者であれば140mmを使う機会も少なからずあると思います。換算して27mmまで引けますから、必要充分だと思います。もし少しでも望遠撮影をしたい、運動会やその他行事ごとをしっかり撮影したいという場合は、ダブルズームキットをお勧めします。18-55mmのほうが間違いなく普段使いにはよいです。
あとは本格的に鉄道撮影をメインにしたいのであれば、こちらもダブルズームキットにするか、もっと別の望遠レンズを探すことをお勧めします。少しでも一眼レフを触ったことがあるのであればなおのこと。
このレンズを使用するのであれば、編集ソフトが必須級となります。自動ゆがみ補正とヴィネットコントロールだけでは抑えられない部分や、開放付近中心に生まれる軸上収差は目に入ると思います。NX-studio若しくはLightroomあたりが使用できる環境を整えることをお勧めします。
前回のレビューのときにも話しましたが、高倍率ズームは、“利便性と共に、全域で最低ラインの描写をするレンズ”だと解釈しています。このレンズの場合は、倍率をそこそこに抑えた以上、バランスの良い出来だと思います。この性能で、VRを搭載して、口径67mmであることを踏まえれば、ほしいと思ったシーンがあればコストをかけて手に入れてよいと思います。現行商品である以上、メーカー修理も効きますし、最大の利点として、新品での入手が可能です。これだけでも大きなアドバンテージです。勿論、このレンズならば拾えるシーンは確かにたくさんあります。高倍率ズームとしての実力は確かですが、このレンズでなければ拾えないシーンというのは必ずしも存在しません。焦点距離で行けば18-200mmや18-300mm、純正にこだわらなければ、さらに上をいく18-400mmもあります。f値では24-120mmがあります。ほかの選択肢をしっかりと吟味したうえで、本当にこの玉がいい理由を見つけてから購入するのが最善でしょう。
最後にもう一つ。。高倍率ズームの性能は所持しているボディにも左右されます。このレンズのユーザの多くはD7200やD7500ユーザだと思います。これに加えてD500のようなAPS-C上級機との組み合わせをお勧めします。ボディ内モーターのないD5600やD3500では67mmの前玉はフロントヘビーです。また、レスポンスやISO感度設定の広さなどの面で、撮影の可能性が大幅に下がる可能性があります。中級機や初級機である以上、上級機にはどうしても劣る面があります。その中で少しでも良い撮影結果を得たいのであれば、レンズ側でアドバンテージを作ってやるしかないです。裏を返せば上級機にさらにレンズ側のアドバンテージを持たせてやれば、先ほど記したようにこのレンズでは拾えないシーンを拾える可能性があります。f値と利便性はトレードオフですから、若いf値を取るのか利便性を取るのかは撮影者次第です。上に掲載した猫の写真、街灯の明かりがあるのみの23時過ぎの道路ですが、あの状況下でISO25600を選択できる機種でなければあの撮影は叶わないわけです。カメラを持つ人間として、撮影したいもの、若しくは撮影しなければならないものを前にしたとき、最悪の結果は撮影ができなかったことです。どんなカメラを使おうと自由ですが、利便性を取ったが故に撮影結果を逃したのであれば本末転倒です。打率を上げるためのツールで打率を落としているわけですから。誰が何と言おうと結果は覆りませんし、一生付きまとうものです。カメラを構え、一瞬に対峙する者としての覚悟が宿る道具がレンズです。その選択は、すなわちこれからの撮影結果のすべての責任がのしかかるものですから、簡単に決めてしまわないように。最善としては、信用できる第三者に相談することです。
長くなりすぎました。このあたりにしておきましょう。前回の18-200mmで書けなかったことも発散しておきました。
AF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR
- 焦点距離…18~140mm(35mm判で27-210mm)
- 手ブレ補正…4段
- 最大絞り…f/3.5(18mm側) f/5.6(140mm側)
- 最小絞り…f/22(18mm側) f/38(140mm側)
- 絞り羽根…7枚(円形絞り)
- 最短撮影距離…0.45m(全域)
- レンズ構成…12群17枚(EDレンズ1枚、非球面レンズ1枚)
- フィルター径…67mm
- レンズフード…HB-32

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