レンズの社説 9本目

気づけば春になっていました。

今回はこちら…

Ai AF Zoom-Nikkor 80-200mm f/2.8D ED です。

今でいう70-200/2.8枠、要するに大三元の望遠ズームです。

1992年より発売開始、AiAFでは3世代あるうちの2代目です。

D600のスタンダード、ヴィネットコントロールはOFFです。

特記以外は全て5000KでRAW現像しております。

1/800sec f/3.2 ISO200 (200mm)
SD 5000K

後ボケに気を遣ってテレ側のf/3.2で最短付近です。シャープネスはまずまずです。もう少し絞りたい。

1/800sec f/2.8 ISO400 (80mm)
SD 5000K
1/800sec f/2.8 ISO400 (200mm)
SD 5000K

同じ場所で広角端と望遠端です。

はっきりとした線を求めるのであればf/4以降に絞るのがおすすめです。

1/1000sec f/4 ISO400 (200mm)
SD 5000K

30mほど離れた水鳥です。ひとまず線は出ています。

1/3200sec f/2.8 ISO100 (200mm)
SD 5000K

テレ側では歪曲収差が顕著です。

開放ですが、少しばかりヤワです。収差も乗るのであまり実用的ではありません。

1/2000sec f/2.8 ISO100 (105mm付近)
SD 5000K

前後ボケの様子です。こう見るとそこそこに自然です。

1/2000sec f/3.5 ISO200 (200mm)
SD 5000K

ピント面まで90m程度です。

きっちり写って欲しいのであればまだ絞りたいです。

ここからは別日取材です。

1/400sec f/4.5 ISO160 (200mm)
SD 4800K

手前を抱えて、ピントは無限近い画面です。画質の安定はまだ先ですね。

1/1000sec f/2.8 ISO160 (200mm)
SD 4750K

モニターで確認したら水平が取れていません。ひどい。

ピント面までは30m強です。このくらいの距離なら線の出方が良い印象です。収差もほどほどですが、ここから離れていくと徐々に顕著になります。

1/2000sec f/3.5 ISO200 (80mm)
SD 5000K

広い方です。後ボケは自然に、信号の線は細く、拡大してみても花の一つ一つがきっちり出ています。


珍しく…

珍しく意欲があってレビューを書いています。

たかが数日使っただけですので日にちを深める度に書き足して行くと思います。

メインにしたい人へ。

少なくともコストと性能のバランスは取れていると思います。鉄道やその他動体を相手にするならかけられるだけのコストをかけて一世代でも新しいものに行くのをお勧めします。

はっきり申すと開放はヤワです。ここばかりは仕方ありません。

しかし、一段や二段絞ってやるだけで十分な絵を出します。下手なf値の変わるデジ設計のズームよりお勧めです。その分、手ぶれ補正がありませんし、AFもそれほど早くはありません。

ここは価格とトレードオフだと思います。それ以上をこの価格帯に期待することのほうが野暮です。

さらに、数値上でいいからf/2.8が出せるというのは強みです。最悪の場合には…と考えられるので、現場での冷静さの確保も努めてくれます。

サブにしたい人へ。

当レンズはサブ望遠にとってもよいて考えております。予算に余裕があれば、是非とも<New>へ行って欲しいものですが、直進ズームが扱えるのであれば当レンズも選択肢です。

特に遠征など、荷物を節約したい場面では、小ささで強い部分があると思います。

なによりも、レンズの電子接点が全て壊れても稼働するという点です。

ここは最新のレンズでいくらコストをかけても実現のできないものです。

普段使いでも、2台運用する際の望遠や、メインはとっておきまで封印しておきたい場面など、非常に小回りが効くと思います。

少なくとも先日の撮影仕事でも、撮影の機会をくれました。ひとたび鏡筒を引けば200mmが出せますので、本当に直進に慣れてさえすれば、速写性には貢献してくれます。

が、デメリットはただ一つ。修理が効きません。<New>であればメーカーサポートがまだあります。

そのほか…

見た目の割には重いです。地味に径は77mmですし、AF-S 70-200/4Gよりも600gほど重たいです。しかしAF-S 70-200/2.8G l型比では200gほど軽いですので、まだまだです。

同世代のレンズのせいで、どうもプラスチックに見えますが、梨地の手触りの良い仕上げです。銘板の主張も激しくないので、見た目では好印象です。

フォーカスリミッターが便利です。

取材能力には長けています。ここは大三元の系譜を感じます。そういう面では一度でいいのでフィルムでの絵が気になります。

あとは最近のレンズではできない、f値による絵作りができます。f/3.5だとどうなのか、f/4だとどうなのか、1/3ステップ毎の絵の変わりようが把握できればあなたの道具になります。これをどう活かすかは人次第ですが、若いf値を“写らん”やら“甘い”で片付けるうちは、どうぞ後継のレンズへ…

この一本で世間を戦い抜いたものが居るのです。それも趣味ではなく、仕事です。この一本でメシを食ってきた人間が確かに居るのです。安く手に入るからこそ、広く使われてきたからこそ、そのような背景があるのです。

なんにせよそうですが、道具は扱うものの精神が宿るものです。道具に使われないためには、自分の心の持ち様を変えねばなりません。

それが、純正の大三元ズームを扱うからには、最低限必要な敬意だと考えております。

2025/4/21追記

ちまちまと持ち出して使っていますが、この焦点域でこのf値ならこの大きさは腑に落ちます。見た目の割に重いので思うところがありましたが、運用すれば慣れます。

9枚絞りはありがたいところです。夜間の光源でも使用を躊躇いません。もちろん円形絞りが最適ではありますが、光芒を稼ぐ場面では重宝したいですね。ボケは割と自然です。

早いところHB-7が欲しいです。かなり前玉が繰り出してくるので、ハレを拾い易いほか、雨の日の運用をどうしても躊躇います。

動体で扱うならフルサイズ機での運用をお勧めします。

AFからMFにノッチを切り替えると回し量があったのちにピントリングと連動しだすので、初動にラグがあります。これを把握出来ておらず一つシーンを逃しています。

AF微調整を-20(最大値)にした上でそれでもピントが合焦しない気がします。背景に吸われやすいのか、個体差でズレが生じているのかは不明です。

これにより筆者はほとんどMFで運用していました。AFについてはもう少し煮詰めます。

2025/9/2追記

HB-7を手にしてしばらく運用しました。軽減には効果があると見ています。うちでの使い道はほとんど終了したのでちょっとばかし知り合いのところへ出向させています。

しばらく使った感想としては概ねこれまでと変わったところはありません。良くも悪くも大三元なのでひたすら同じラインを突っ走ってくれる安心感があります。ついこのあいだは欲しいと思う場面に当たりました。やはりこのクラスは一本持っておいて損はないと思います。


このくらいにしておきましょうか。

  • 焦点距離…80〜200mm
  • 手ぶれ補正…なし
  • 開放f値…f/2.8
  • 最小f値…f/32
  • 絞り羽根…9枚(数えた)
  • 最短撮影距離…1.8m、全域マクロで実質1.5m、フォーカスリミッターあり。
  • レンズ構成…11群16枚?<New>のデータだが、光学系はSタイプから変わっていないそう。(出典より)
  • フィルター径…77mm
  • レンズフード…HB-7

出典:ニッコール千夜一夜物語「第六十七夜 AI AF-S Zoom Nikkor ED 80~200mm F2.8D(IF)」より。

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